第2弾【独自解説】食のトレンドど真ん中
健康事業に取り組む食品企業

 

はじめに 健康の紹介と課題

みなさんは、健康に気を付けているだろうか?
食生活に気をつかったり、健康に良いものを選んで食べている方も多いだろう。
日本政策金融公庫農林水産事業の「平成311月消費者動向 調査」によると、現在の食の志向は「健康志向」が上昇傾向にあり、過去最高となった。1) (1)(日本政策金融公庫) 食の志向 「健康志向」が続伸、過去最高を更新
特に、特定保健用食品(以下では「特保」)の市場規模は10年間で倍増している。2)(2)(平成26年版 厚生労働白書) 第2章 健康をめぐる状況と意識
健康意識の高まりも相まって、2018年の日本人の平均寿命は女性が87.32歳、男性が81.25歳で、ともに過去最高を更新した。3)(3)(日経新聞)平均寿命、最高を更新 女性87.32歳 男性81.25
しかし、ここで考えたいのが、平均寿命は健康寿命とは異なるということだ。
健康寿命とは、「心身ともに自立し、健康的に生活できる期間」のことを指す。
厚生労働省によると、男性の健康寿命は71.19歳、女性は74.21歳と平均寿命と約10年の開きがある。
つまり、日常生活に制限のある健康ではない期間が平均的に約10年あるということだ。4)(4)(探しっくす) 「人生100年時代」健康寿命を延ばすためにできる取り組み|介護のコラム
かつては「長生きは喜ばしいこと」と長寿を望む人が多かったが、今は「長生きはリスク」という捉え方にシフトし、長生きに備え健康対策に取り組む人が増えている。5)(5)(ウーマンズラボ)健康ブームは本当に起きてる?グローバル調査から見る健康意識の変化

以上のことから、「健康」というテーマは、食のトレンドであると言える


 


問題作成者(編集部)
食品業界で「健康」がトレンドになっている背景について3点挙げてみよう。答えは文末に。

1.健康の現在と未来

今、健康が食のトレンドになる背景について具体的には3つある。

1.高齢化(人口分布の変化)

我が国の65歳以上人口は、1950年には総人口の5%に満たなかったが、1994年には14%を超え、2017年10月1日現在、3,515万人で27.7%に達している。
今後も、65歳以上人口は増加傾向が続き、2042年に3,935万人でピークを迎え、その後は減少に転じると推計されている。一方、75歳以上人口は増加を続け、2054年まで増加傾向が続くと見込まれている。高齢者が増えれば増えるほど、健康を意識する層が必然的に増えていくだろう。6)(6)(内閣府)1 高齢化の現状と将来像

2.健康寿命のニーズ(人生100年時代の到来)

医療の発達、栄養状態や衛生環境の改善などによる人生100年時代の到来が予想されている。7)(7)(カオナビ人事用語集) 人生100年時代とは? 働き方はこう変える! 今すぐ必要な「3つの能力」とは?<LIFE SHIFT
「2007年に日本で生まれた子供については、107歳まで生きる確率が50%ある。」とも言われている。8)(8)(University of California, Berkeley (USA) and Max Planck Institute for Demographic Research (Germany).) Human Mortality Database
だから、今までとは異なり、100年という長い期間をより充実したものにするために、生涯にわたって健康であることが今までよりも重視するという価値観に変化していくだろう。9)(9)(厚生労働省)「人生100年時代」に向けて

3.国としての支援体勢の変化(目標、法整備)

➀でも述べた高齢化が進むことで、従来のままでは国の負担は重くなる。
実際に、厚生労働省の2012年推計によれば、年金を含めた社会保障にかかる費用は、2011年度は約108兆円だったのに対し、2025年度は約150兆円まで増大すると見られる。
今の医療費の自己負担割合は、6〜70歳が3割、70〜74歳が2割、75歳以上が1割であるが、これからもこれを続けるのは財政上不可能だという声もある。10)(10)(小林 昌裕) 「人口減少」と「高齢化」進む日本のヤバい問題
そこで、国は、2017年1月に「セルフメディケーション税制」をスタートした。
制度自体は、市販薬の購入額がある一定の額を超えたときに、その金額分の税金の負担を抑えられる制度だ。
この制度の狙いは、症状の軽い病気であれば、病院で受診するのではなく、市販薬を活用して自らの健康管理を行うことで、医療費を減らすことだ。ここから、国に頼ることなく、自分で健康管理をすることがこれまで以上に求められるだろう。11)(11)(日本調剤お客様情報) 税金が戻ってくる?! セルフメディケーション税制って何?

 

2.健康事業に取り組む食品企業

今回は3つの軸、

  1. 技術力・ノウハウを活用して新事業・新領域に発展させる企業たち
  2. グローバルに「健康」価値を提供する企業たち
  3. 新たな健康価値を提供する急成長ベンチャー企業たち

    で分類した。

1.技術力・ノウハウを活用して新事業・新領域に発展させる企業たち

➀キリン:キリングループビジョンとしての健康事業











キリンホールディングスは2019年4月24日、長期経営構想「キリングループ・ビジョン2027」に基づき、食から医にわたる領域で価値を創造し、CSV(共通価値の創造)先進企業を目指すと発表した。12)(12)(吉成 早紀) キリングループが健康事業推進 乳酸菌分野の強化で女性を狙う
キリングループは、30年以上にわたり免疫学の基盤研究を続け、その中で“プラズマ乳酸菌”や“KW乳酸菌”などの乳酸菌を発見し、研究を重ねてきた。
これから、医療機関への新たなチャネル開拓やグループ外企業とのパートナーシップを通じ、
同素材の展開を拡大していく。13)(13)(キリンHP)キリンの独自素材“プラズマ乳酸菌”を配合した新ブランド「iMUSE(イミューズ)」をスタート
キリン社のヘルスサイエンス事業部の佐野環部長は、キリンが免疫研究を取り組み続ける背景について、「昨今の医療費の高騰などで健康寿命を長く保つことが社会課題になっている。」ことを挙げた。14)(14)(食品産業新聞社)キリンHDが乳酸菌事業を強化、自社生産開始に向け埼玉・狭山に新工場
さらに、ビールの製造工程で培った発酵技術を応用して、2019年4月、協和キリン傘下で、医薬品原料やサプリメントを手がける協和発酵バイオを完全子会社にした。
医と食をつなぐ事業は27年に1千億円に引き上げ、本業のもうけを示す事業利益率は20%を狙い、キリンビール(18%)、キリンビバレッジ(10%)を上回る好採算の「将来の成長の柱」にしようとしている。15)(15)(日経新聞)キリン、手探りの健康事業 個人別サプリ提供へ
2019年12月期も好調で、キリンHD全体の医薬事業の事業利益は同期比10%増の554億円だった。16)(16)(News Picks)3分解説】キリンvsファンド。「医薬」をめぐる対決が勃発

➁ヤマサ醤油:核酸系うまみ調味料を生かした医薬品開発











旨味の強いしょう油を作るために、核酸系調味料を添加することが、醤油業界の常識である。17)(17)(井 上 道 隆) しょう油と核酸系調味料について
そこで、1957年に、ヤマサ醤油は、核酸系うまみ調味料の工業的製法を確立し、1961年に核酸系のうま味調味料を発売した。18)(18)(ヤマサ醤油常務取締役 医薬・化成品事業部長 野口 利忠)
醤油のヤマサから医薬のヤマサへ。新しいヤマサを創っていくのはあなたです。

その技術を転用して、医薬品原薬・中間体をはじめとして、幅広く利用されている。19)(19)(ヤマサ醤油HP)  医薬・化成品事業部について
現在は新規の抗HIV薬「MK-8591」として米製薬会社メルクが第II相試験を外注している。20)(20)(薬事日報) ヤマサ醤油 核酸医薬品原料に集中‐中分子の開発支援も視野
 










➂サントリー:セサミEXや健康研究開発所の設立

1993年にゴマの健康食品「セサミン」を発売した後、2001年からは、従来からの健康関連の研究開発を一層強化することを目的に「健康科学研究所」を設立した。21)(21)(サントリーグループ企業情報) 健康食品事業

➃味の素:栄養機能食品としてのサプリメント

味の素がサプリメントで栄養機能食品を発売するのは初めてだ。
2020年5月20日(水)より栄養機能食品「マルチビタミン&ミネラル」を新発売した。22) (22)(PR Times) 味の素㈱サプリメントで初、栄養機能食品※1「マルチビタミン&ミネラル※2」新発売

➄ニッスイ:EPAを使った商品開発

中性脂肪が気になる方に向けたEPA商品として
機能性表示食品「イマークスティックゼリー」を、ニッスイ通販限定で2018年4月1日に本格発売した。23)(23)(PR Times)機能性表示食品「イマークスティックゼリー」、通販限定で本格発売

➅森永乳業:乳酸菌を使ったB to B事業

森永乳業のシールド乳酸菌を導入した企業は100社を超える。
強い競争力ゆえに、シールド乳酸菌を含むB to B事業の営業利益率は2017年3月期には、6.0%と、森永乳業全体の事業の中でも、高い利益率を誇っている。24)(24)(中山 一貴) 森永乳業が「シールド乳酸菌」で稼げる理由

2.グローバルに「健康」価値を提供する企業たち










➆ネスレ:グローバル企業特有の規模

2020年前半に、商品パッケージに栄養の度合いを5段階で示す「栄養スコア」を導入する。
消費者の健康志向が一層広がるとみているためで、まずフランスなど欧州5カ国で5000以上の商品に取り入れる。25)(25)(井上輝一) ネスレ、食事写真をAIが栄養解析するサービス LINEで無料提供
さらに、ネスレ日本は5月28日、食事分析やDNA検査に基づく健康アドバイスを提供する新サービスを、LINE上で無料提供すると発表した。食事を撮影してLINEで送るだけでその写真をAIが自動で解析。
カロリーや栄養価を即時に診断し、不足する栄養分をアドバイスする。26)(26)(細川倫太郎)ネスレ、栄養度合いを5段階表示 欧州で5000品に

➇マルコメ:甘酒でタイの人に健康を

現地法人「マルコメ(タイランド)」社長山本氏らは肌を美しくする効果がある甘酒を、主力の味噌に次ぐ大きな柱に成長させたいと考えている。27)(27)(小堀晋一) 海外日本食 成功の分水嶺(96)マルコメ(タイランド)

➈カルビー:フルグラによる中国進出

中国の電子商取引最大手アリババ・グループ・ホールディングと天猫国際でフルグラを先行販売する。
日本でフルグラ躍進のきっかけとなった「時短+健康志向」の考えを中国で広めていく。28)(28)(山口 佳美) カルビーがアリババと越境ECで提携  松本会長が進めるフルグラ中国戦略

3.新たな健康価値を提供する急成長ベンチャー企業たち










➉ユーグレナ

株式会社ユーグレナは,藻の一種であるミドリムシ(学名:ユーグレナ)を主に活用し食品や化粧品の販売等を行っているバイオテクノロジー企業だ。29)(29)(ユーグレナHP) 株式会社ユーグレナ
2019年5月のユーグレナ公式ニュースリリースによれば、ヒト臨床試験により、微細藻類ユーグレナ(和名:ミドリムシ)粉末を継続的に摂取することで、作業ストレス負荷がかかっている際の自律神経バランスの調整やイライラ感・緊張感の抑制、睡眠の質の改善を示す研究成果を確認しました。本研究の結果は、心身の疲労やストレス、睡眠不足などの現代人が抱える複合的な健康不安を解決し、根本から健康へ導く石垣島ユーグレナのヘルスケアにおける可能性を示している。30)(30)(ユーグレナHPニュースリリース) 石垣島ユーグレナの継続摂取が、現代人が抱える複合的な健康不安を解決し根本から健康へ導く可能性があることを確認しました。ヒト臨床試験で「ストレスによる諸症状の抑制や睡眠の質の改善」を確認
当社の代表商品である「からだにユーグレナ」は石垣島ユーグレナ配合のパウダー状の商品で、水や牛乳に溶かしてドリンクとしてのほか、料理への使用など幅広く活用できる。31)(31)(ユーグレナHP) からだにユーグレナ
直前の下期(2019年4〜9月)と比較して
2020年上半期(2019年10月〜2020年3月)の決算では、ヘルスケア事業の大幅な黒字化を達成している。32)(32))(三ツ村 崇志) ユーグレナ上半期決算、コロナ禍の健康志向で需要増。次世代バイオジェットの商業フライト予定は「柔軟に対応」

⑪dricos:オーダーメイドサプリメント

身体で不足した栄養素の解析から提供までをワンストップで行う、世界初のオーダーメイドサプリメントサーバー「healthServer(ヘルスサーバー)」を展開。33)(33)(dricos HP)世界初のオーダーメイドサプリメントサーバー

⑫COMP:完全食

””完全食””(必須栄養素をバランスよく配合した食品)を開発・販売している。
『COMP』は、厚生労働省が定めた健康的な食生活を送るための必須栄養素が47種類あるが、これら全ての項目に準拠した食品である。34)(34)(大寺 明) 食事に未来がやってきた!日本初の完全食『COMP』が、人々を生物的義務から解放する。コンプ代表取締役CEO/開発者・鈴木優太インタビュー

3.この記事を読んで、就活に生かせるところ












食品業界のトレンドど真ん中である、「健康」というテーマ。

就活生として押さえるべき点は、「健康」というトレンドテーマがなぜ起こっているのかという部分をしっかり掴む必要がある。ここでは、人口減少・少子高齢化、人生100年時代の健康寿命、という現状理解と未来予測の説明があった。その未来予測から、中長期的に見て日本が、また世界が進む方向性において「健康」という価値へのニーズがより強く求められることが理解できると思う。

そのニーズや市場の潮流(流れ)を理解しながら、各社の取組みや未来への投資を見ることで、より深く企業の戦略や未来像が感じられるはずだ。

「健康」というトレンドに対しても、企業によってアプローチの違いがあること、各社の特徴・強みが違うことも読み取れたと思う。その企業だからこそのユニークな点、オンリーワンな点をしっかり掴みながら企業について整理することが、エントリーシートや面接で聞かれた際に深い回答につながることになる。大事な視点として就活生に持って欲しいと思う。

まとめ

食品業界に関わる記事の第2弾として「健康」を取り上げてみたが、
いかがだっただろうか?「健康」という食のトレンドを感じることができただろうか?
自分がこの記事を読んでどう感じるか。なぜそう感じたか。
そういったことを大切にしながらこれからもぜひ楽しみながら読み込んでみてほしい。

問題作成者(編集部):食品業界で「健康」がトレンドになっている背景について3点挙げてみよう。
  1. 65歳以上人口の増加
  2. 人生100年時代の到来に伴う健康意識の高まり
  3. 国に頼ることなく、自分で健康管理をすることがこれまで以上に求められるから

 

References

References
1  (1)(日本政策金融公庫) 食の志向 「健康志向」が続伸、過去最高を更新
2 (2)(平成26年版 厚生労働白書) 第2章 健康をめぐる状況と意識
3 (3)(日経新聞)平均寿命、最高を更新 女性87.32歳 男性81.25
4 (4)(探しっくす) 「人生100年時代」健康寿命を延ばすためにできる取り組み|介護のコラム
5 (5)(ウーマンズラボ)健康ブームは本当に起きてる?グローバル調査から見る健康意識の変化
6 (6)(内閣府)1 高齢化の現状と将来像
7 (7)(カオナビ人事用語集) 人生100年時代とは? 働き方はこう変える! 今すぐ必要な「3つの能力」とは?<LIFE SHIFT
8 (8)(University of California, Berkeley (USA) and Max Planck Institute for Demographic Research (Germany).) Human Mortality Database
9 (9)(厚生労働省)「人生100年時代」に向けて
10 (10)(小林 昌裕) 「人口減少」と「高齢化」進む日本のヤバい問題
11 (11)(日本調剤お客様情報) 税金が戻ってくる?! セルフメディケーション税制って何?
12 (12)(吉成 早紀) キリングループが健康事業推進 乳酸菌分野の強化で女性を狙う
13 (13)(キリンHP)キリンの独自素材“プラズマ乳酸菌”を配合した新ブランド「iMUSE(イミューズ)」をスタート
14 (14)(食品産業新聞社)キリンHDが乳酸菌事業を強化、自社生産開始に向け埼玉・狭山に新工場
15 (15)(日経新聞)キリン、手探りの健康事業 個人別サプリ提供へ
16 (16)(News Picks)3分解説】キリンvsファンド。「医薬」をめぐる対決が勃発
17 (17)(井 上 道 隆) しょう油と核酸系調味料について
18 (18)(ヤマサ醤油常務取締役 医薬・化成品事業部長 野口 利忠)
醤油のヤマサから医薬のヤマサへ。新しいヤマサを創っていくのはあなたです。
19 (19)(ヤマサ醤油HP)  医薬・化成品事業部について
20 (20)(薬事日報) ヤマサ醤油 核酸医薬品原料に集中‐中分子の開発支援も視野
21 (21)(サントリーグループ企業情報) 健康食品事業
22 (22)(PR Times) 味の素㈱サプリメントで初、栄養機能食品※1「マルチビタミン&ミネラル※2」新発売
23 (23)(PR Times)機能性表示食品「イマークスティックゼリー」、通販限定で本格発売
24 (24)(中山 一貴) 森永乳業が「シールド乳酸菌」で稼げる理由
25 (25)(井上輝一) ネスレ、食事写真をAIが栄養解析するサービス LINEで無料提供
26 (26)(細川倫太郎)ネスレ、栄養度合いを5段階表示 欧州で5000品に
27 (27)(小堀晋一) 海外日本食 成功の分水嶺(96)マルコメ(タイランド)
28 (28)(山口 佳美) カルビーがアリババと越境ECで提携  松本会長が進めるフルグラ中国戦略
29 (29)(ユーグレナHP) 株式会社ユーグレナ
30 (30)(ユーグレナHPニュースリリース) 石垣島ユーグレナの継続摂取が、現代人が抱える複合的な健康不安を解決し根本から健康へ導く可能性があることを確認しました。ヒト臨床試験で「ストレスによる諸症状の抑制や睡眠の質の改善」を確認
31 (31)(ユーグレナHP) からだにユーグレナ
32 (32))(三ツ村 崇志) ユーグレナ上半期決算、コロナ禍の健康志向で需要増。次世代バイオジェットの商業フライト予定は「柔軟に対応」
33 (33)(dricos HP)世界初のオーダーメイドサプリメントサーバー
34 (34)(大寺 明) 食事に未来がやってきた!日本初の完全食『COMP』が、人々を生物的義務から解放する。コンプ代表取締役CEO/開発者・鈴木優太インタビュー